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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

執筆者の写真橘川 徳夫

【PRコラム】東京都知事選挙を振り返って

先日の東京知事選は、過去最多の56人が立候補し、ポスターの掲示の問題などいろいろと話題になりましたが、蓋を開けてみれば現職の小池都知事が圧勝という結果になりました。


一方、YouTubeを活用して選挙運動を進めた石丸伸二候補が小池知事の有力な対抗馬とみなされていた蓮舫候補を抑えて2位に躍進したことなどは、今後の選挙のあり方について一石を投じる結果となりました。


選挙は、PR活動の巧拙が結果を左右します。まもなく大詰めを迎えるアメリカの大統領選挙では、共和党、民主党の両陣営とも、PR会社と協力しながら大量の資金を投じて世論形成を図ろうとしています。


今回の都知事選ではのべ56人が立候補しました。テレビや新聞などの主要メディアは、全員をカバーするのが難しいため、実質上、主要4候補に絞って紹介していました。これは、他の候補から見ると不公平と言えますが、実際56人を公平にニュース番組で取り上げるのは不可能です。しかしNHKの政見放送には56人全員が一定の持ち時間を与えられます。影響力が低下したとはいえ、各候補はテレビの全国放送で顔を売る機会が得られます。たとえ供託金を没収されたとしても、立候補する価値を感じる候補者が続出するのは理解できます。


しかしながら、今回の都知事選では、既存のメディアではなく、YouTubeを主戦場に、インターネットを効果的に使った石丸候補が得票を重ねました。主な支持層は20代、30代の若年者層でした。この結果を受け、各メディアは、主に若い世代が、テレビよりもSNSを経由して都知事選に興味を持ったことが大きかったのではと分析をしています。若者が興味を持ったことで選挙戦が盛り上がり、投票率のアップにつながるのであれば、歓迎すべき傾向であるのかもしれません。また、今回の石丸旋風を機に、今後の選挙戦術は大きく変わってくるような気がします。


今回、石丸氏は、自陣営の選挙活動などを動画撮影して、SNS上で拡散するよう支持者に呼びかけました。これまで、選挙演説などは、動画投稿者が恣意的に切り取って悪意ある投稿が広まってしまうリスクもあるため、撮影をNGにすることが一般的でした。ところが、石丸陣営はこれと真反対の戦略を採ったのです。再生回数を伸ばしたいYouTuberと連携して彼らに積極的に撮影をさせ、効果的に情報拡散を図るメリットを重視したわけです。


この発想の転換は、PR会社を経営する私としても衝撃的でした。石丸候補の手法は、PRの奥深さを教えてくれたと思います。私も彼の攻めの姿勢を見習って、独創的なPR施策を提案しなければ、と決意を新たにしました。


次回は、今回の都知事選を騒がせた「ポスター問題」についてもPR活動の観点から考察を深めてみたいと思います。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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