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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】東京都知事選挙のポスター問題を考える

少し前に、東京都知事選での、石丸伸二候補のSNSでのPR戦略について解説をさせていただきました。何かと話題のあった選挙戦でしたが、今回はポスターの問題についてPR会社の視線でお話しできればと思います。


今回の都知事選の掲示板を選挙目的でなく、PRの媒体として販売した政党があり、それを自分のPRとして利用した方がいました。法の網の目をかいくぐった……と言ってしまえばそれまでですが、ほとんどの人が彼らの行動に違和感を覚えたのではないでしょうか。


一般的に、私たちは、現在の社会を変えたいという強い意志をもった人こそが選挙に立候補するものだと思っています。ましてや、選挙後にほぼ没収されるのが確実な300万円の供託金を払ってまで、単に目立つためだけに立候補するというのは、やはり世間の常識から大きく外れていると言えるでしょう。


今回のポスター事件は、SNSが発達した副産物であると解釈できるかもしれません。SNSの利用者は、自分の投稿に関心を持ってもらうためにあらゆる方法を駆使します。その一つの策として、ポスターを掲示してアクセスを促すというのは、現代社会では斬新な方策といえるかもしれません。


PR会社を経営する自分も、よくこんなことを思いついたなと思った一方で、こうしたアイデア力を、もっとより良いPR方策に活かせるのではないかとも感じました。


もし、今後も選挙掲示板がPRのための媒体として活用することが許されるのであれば、今後さらに思いもよらない施策も登場するでしょう。ただし、それは法令を遵守する前提がなくてはならず、かつ市民が不快にならないものでなければなりません。


また、見るに耐えない政見放送を展開した候補者も散見されました。WebやSNS経由での情報発信が主力になったとはいえ、テレビの影響力もいまだに大きなものがあります。公共の電波に乗せて、5分30秒もの時間を完全に自分の好きなように独占できる機会は、他には考えられません。もし広告費用で換算したならば、数千万円規模となるでしょう。彼らにとって、300万円は高くなかったのかもしれません。


いろいろと物議をかもした都知事選ですが、こういうことで話題になるのはやはり望ましい状態ではありません。今後は、もっと立候補者が本当に知事としてふさわしい人物かどうかを有権者に効果的に伝えられるような広報を行うようにしてもらいたいものです。


選挙は、民主主義の根幹にかかわることですから、候補者の主張が都民に平等に公平に正しく伝わることが何よりも大事です。また、自己アピール目的のみで立候補する行為は、社会にいたずらに混乱を招く結果にしかならないので、今後は立候補の手続きをより厳正に実施する必要があるのかもしれません。


このあたりの論議は私のようなPRコンサルタントではなく、国会議員を始めとしたなど立法の専門家にゆだねたいと思います。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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