これまで、インターネットが主流となる現代におけるPR戦略の課題についてお話ししてきました。今回は、B2B(企業間取引)のPRについて考えてみたいと思います。
B2Bビジネスを展開する企業からPRの相談を受けることがありますが、正直なところ、PRが本当に効果的を考えると受注するかの判断はとても難しいです。B2Bは取引先が明確であるため、一見するとPRがしやすいように思えます。
しかし、実際にはターゲットを絞ったPRが難しいという問題があります。PRの主要な手段となるマスメディアは広範囲に情報を届ける性質があり、特定の企業や業界だけに情報を届けるのは容易ではありません。たとえマスメディアで紹介されたとしても、ターゲット企業に確実に届くとは限らず、費用対効果の面でも疑問が残ります。
また、現代のメディアは特定の趣味や分野に特化したものが多く、スポーツなら野球やサッカー、文化ならアニメや漫画など、細分化が進んでいます。これはB2C(一般消費者向けビジネス)を前提としたメディアの特徴であり、B2B向けの情報発信とは性質が異なります。企業の情報収集は、個々の担当者が取得し、それを社内で共有する形が一般的です。
したがって、企業全体に情報を届けるのではなく、個々の担当者に対してアプローチする必要があります。しかし、企業内には経営者、営業担当、技術者、新入社員など、さまざまな立場の人がおり、関心を持つ情報も異なります。
このような状況を踏まえると、B2BのPRよりも営業活動を強化した方が成果につながりやすい場合があります。ターゲットが明確であれば、マッチングサイトや営業代行サービスを利用する、もしくは営業リストを作成して直接アプローチするなどの方法が有効です。
では、B2BのPRは不要なのでしょうか?
決してそうではありません。例えば、大手機械メーカーのテレビCMを見かけることがあります。これは、製品の認知度を高めるだけでなく、「この会社は大企業だから安心して取引できる」というブランドイメージを形成する目的もあります。また、新卒採用活動の一環として企業名を広める意図も含まれています。
B2B企業は、知っている人にはよく知られている一方で、知らない人には全く認知されていないことが多いため、認知度向上のためのPRは重要です。特に、予算の関係でマスメディアへの広告が難しい場合でも、業界紙や専門誌での紹介を狙うことで、ターゲットに近い層へアプローチできます。業界紙・専門誌での掲載が話題になれば、次のステップとして大手メディアに取り上げられる可能性も高まります。
また、自社がメディアで紹介された記事を営業資料として活用する企業も多く見られます。メディアに掲載されることで信頼性が向上し、営業活動を後押しする効果も期待できます。
B2BだからPRが難しいと決めつけず、どのようなPRが効果的かを考え、戦略的に取り組むことが重要です。PRの工夫次第で、企業のブランド力を高め、営業活動にも好影響を与えることができるでしょう。
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