top of page

無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【実践PR講座 その25】PR戦略を考える順番:「知らないこと」から整理する

執筆者の写真: 橘川 徳夫橘川 徳夫

これまで2回にわたり、PR戦略を5W1Hの観点から「What(何を)」「Who(誰に)」「Why(なぜ)」の3つの要素に焦点を当てて考えてきました。今回は、これらの要素をどの順番で考えるのが効果的かについて説明します。


結論から言うと、「Why(なぜ)」から考えるのは適切ではありません。まずは「What(何を)」と「Who(誰に)」のどちらから考えるかですが、これは状況によって柔軟に決めるべきです。どちらかにこだわる必要はありません。


PR戦略を考える際は、まず現状を分析し、課題を明確にすることが重要です。そのうえで適切な対策を講じ、方針や施策を決めていきます。


PRを考える際に、単に「伝えたいこと」を整理するのではなく、「何が知られていないのか」「誰が知らないのか」を明確にすることで、より戦略的なアプローチが可能になります。対象者(Who)や知られていない内容(What)が明らかになれば、その理由(Why)を掘り下げることで、PR施策の方向性が見えてきます。


これまで同様、野球を例にしてPR戦略を考えてみましょう。


たとえば、女性観客を増やすためにエステ付きの観戦席を設けたものの、期待したほど来場者が増えなかったとします。この場合、

1. Who(誰が知らないのか) → 野球場にエステがあることを知らない女性

2. What(何を伝えるべきか) → 野球観戦とエステを組み合わせた新しい体験


次に、「Why(なぜ知らないのか)」を考えると、

• そもそも野球場の存在を知らない

• 野球を観戦したことがない

といった理由が浮かび上がるかもしれません。


そうであれば、女性向けのキャンペーンを企画し、情報を広めることがPRの役割になります。


たとえば、

• 「女性観戦デー」を設け、エステの割引や観戦チケットの割引を実施

• SNS広告を活用し、女性に特化した情報発信を強化

といった施策が考えられます。


また、別のケースとして、球団のマスコットが子どもに人気があると思っていたが、実際には「マスコットのダンス」が話題になっていたとします。この場合、次のようなPR戦略が考えられます。


1. What(何を伝えるべきか) → マスコットダンスの魅力

2. Who(誰に伝えるべきか) → ダンスに興味のある高校生

3. Why(なぜ高校生に伝えるべきか) → 高校生がSNSで拡散しやすいため、球団の認知度向上につながる


そこで、高校生のダンス部に動画投稿を呼びかけ、SNS上で拡散を狙うような施策を展開することで、若い世代に球団への興味を持ってもらうPRが可能になります。


PR戦略を考える際は、単に「伝えたいこと」からスタートするのではなく、「何を知られていないのか」「誰が知らないのか」を整理することが重要です。そのうえで「なぜ知られていないのか」を考えることで、よりターゲットに合ったPR施策を立案できます。

最新記事

すべて表示

コメント


著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

bottom of page