大学時代、私は落語研究会(落研)に所属していました。当時は、宴席で「落語をやって!」と頼まれることもありましたが、大学を卒業して30年以上が経ち、その間一度も落語をしていないので、今では一席まるまる覚えているわけではありません。
落研出身だから「話がうまい」と思われることもありますが、実際には噺家さんでも即興が得意ではない方もいるので、落語ができるからといって話し上手というわけではないのです。
確かに、人を笑わせるのが好きで、場を盛り上げることは得意かもしれませんが、それは落語をやっていたからではないと思っています。
とはいえ、落語が嫌いというわけではありません。ただ、演じるのがそこまで好きではないだけで、今でも落語会のプロデュースなどには関わっています。
落語=笑点ではありません!
落語に対してよくある誤解のひとつが、「落語=笑点」というもの。テレビで唯一全国的に放送されているのが『笑点』なので、仕方ない部分もありますが、あれは「大喜利」といって、落語の合間に行う言葉遊びであり、落語とは別物です。
落語とは、簡単に言えば「落ち」がある話芸のこと。人によっては「落語はただ笑える話」と思っているかもしれませんが、実は人情噺や怪談話などもあり、時には泣けたり、怖さで身が縮むこともあります。
古典落語と新作落語
落語家が自分で話を考えていると思われがちですが、実際に演じられている多くは「古典落語」といって、代々引き継がれてきたものです。自分で新しい話を作る「新作落語」を演じる噺家もいますが、全体から見ると少数派です。
古典落語が中心なので、同じ話を何度も聴くことがあります。私は本は一度読むと再読することが少ないのですが、落語は何度聴いても笑えたり、感動したりします。もちろん噺家によって出来に差が出ることもありますが、何度聴いてもおもしろいと感じるのが落語の魅力です。
落語の魅力は一人で演じること
落語は、一人で複数の登場人物を演じる芸能です。映画や舞台で言えば、主演から助演までをすべて一人でこなし、演出や監督も自分で担当するようなもの。もし新作落語をやるなら、脚本まで自分で書くことになります。
落語を聴く側は、噺家の話を通して、自分なりに登場人物や舞台を想像(創造)しながら楽しむことが求められます。だからこそ、同じ話を何度聴いても、噺家の技量や自分の想像次第で新たな発見があり、飽きないのです。
噺家の技量が大切
落語を楽しむ鍵は、受け手の想像力を引き出す噺家の技量にあります。上手い噺家は、自然に観客の想像力をかき立て、登場人物が生き生きと感じられます。一方で、下手な噺家だと想像がしにくく、物足りなさを感じることもあります。
さあ、寄席に行ってみよう!
このブログを読んで落語に興味が湧いた方は、ぜひ一度寄席に足を運んでみてください。4時間ほどで10人ほどの噺家の落語を楽しむことができるので、きっと素晴らしい体験ができるはずです!