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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

前回は、SNSの普及によりAISASモデルが複雑化したことをお話ししました。今回は、その複雑化した消費者行動に対して、どのようにPR戦略を立てていけば良いのかについて解説します。

 

従来のPR施策と現代の若者層へのアプローチの課題

従来のPRは、テレビや新聞といったマスメディアを通じて行われていました。しかし、最近では特に若者の間で、テレビを見ない、新聞を読まない人が増えています。その結果、従来のメディアを使ったPRでは、若者にリーチするのが難しくなってきました。


若者のメディア消費の変化

若者は、インターネットやSNS、動画配信サービスなどのデジタルメディアを中心に情報を集めています。スマートフォンやタブレットを使って、いつでもどこでも情報を得ることができる環境に慣れ親しんでおり、テレビや新聞といった伝統的なメディアの利用は減少しています。このようなメディア消費の変化により、従来のPR手法が若者に届きにくくなっているのです。


総合的なアプローチの必要性

このような状況に対応するためには、PR施策だけでなく、WEB施策やSNS施策を組み合わせた総合的なアプローチが必要です。




 

1. PR施策(図の①部分)

従来のPR施策は、主にテレビや新聞などのマスメディアを通じて行われていました。しかし、現在はそれに加えて、Web広告やプレスリリースの配信、PRイベントの開催など、さまざまな手法を組み合わせる必要があります。これらの施策は「Attention(気づき)」と「Interest(関心・興味)」の段階で効果を発揮します。

2. WEB施策(図の②部分)

若者層は、検索エンジンやウェブサイトを利用して情報を収集する傾向が強いです。そのため、SEO対策やウェブサイトのリニューアル、オウンドメディアの開設、さらには動画コンテンツの提供が重要となります。これにより、「Search(検索)」段階での接触機会を増やし、消費者が求める情報をスムーズに提供できます。

3. SNS施策(図の③部分)

SNSは若者が最も多く利用するメディアの一つであり、ここでの施策が非常に効果的です。SNSアカウントの開設・運営やSNS広告、インフルエンサーの活用などを通じて、消費者と双方向のコミュニケーションを図ります。これにより、「Interest(関心・興味)」や「Action(行動・購買)」だけでなく、「Share(共有)」の段階でも大きな影響を与えることが可能です。

 

これらの施策を組み合わせることで、複雑化したAISASモデルに対応する総合的なPR戦略が構築できます。特に若者層に向けては、テレビや新聞などの伝統的なメディアだけでなく、WebやSNSを積極的に活用することが不可欠です。これにより、消費者のさまざまな接点でのエンゲージメントを強化し、より効果的なマーケティングが実現できるでしょう。

 

この図を活用することで、現代のPR戦略がいかに総合的で柔軟なアプローチを必要としているかが視覚的に理解しやすくなります。企業は、ターゲット層のメディア消費の変化に対応し、適切な施策を組み合わせることで、競争力を高めることが求められています。

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仕事柄、世の中のトレンドに最低限ついていけるように、TVドラマはできるだけ意識的に数多く見るようにしています。今は、平均すると週に5本程度でしょうか。仕事で忙しくて観られないこともあるので、できるだけ面白そうなものを選んで観ることにしています。しかし、なぜか2024年夏のドラマは惹かれるタイトルが多く、NHKの大河ドラマも含めて、週に9本観ていました(逆に春ドラマは、おもしろいのがなく3本でした)。


私の若い頃のドラマは、人気小説が原作になることが多かったように思います。ですが、最近のドラマは漫画・コミックが原作となることが多いようです。私は漫画を読むことがほとんどないので、ドラマになってそれが人気漫画だと初めて知ることも多いです(この夏はまった「西園寺さんは家事をしない」は人気コミックのドラマ化作品でした)。


読書好きの私ですから、人気作家の小説はもちろん読みます。そうなるとドラマ化、映画化される本もあります。そこで問いたいのが、ドラマ化した原作の本や漫画を観て楽しめるか、ドラマを観て原作を読んで面白いかということです。


私は個人的に自分でこれまでに読んだ本の映画やドラマは、あまり観ないようにしてきました。なぜ観ないのかと言うと、私が小説を読んでいる時、小説の登場人物を自分なりに想像するのが好きだからです。この登場人物はあの俳優に演じさせたいな…、このヒロインはあの若手女優がいいな…などと考えながら読み進めることも多々あります。自分なりの登場人物像が頭の中で固まっているので、ドラマや映画を観てしまうとと自分の思い描いた物語の世界観と実写ドラマの印象がかなりかけ離れていたとき、読後感が台無しになってしまっては嫌だ……と無意識に考えていたのかもしれません。


ですが、こうした原作と実写化のイメージの乖離は、私だけでなく、多くの人が一度は経験していることなのではないでしょうか?それにしても、なぜ原作を読んで思い描いた世界観とドラマを見たときの印象がかけはなれてしまうのでしょうか?


それは、恐らくドラマと小説のそもそもの作り方にも原因があるのかもしれません。ドラマの場合、1クール約10話で構成するのが一般的なので、次の放送回も視聴者に観てもらわなければならないので、1話ごとに盛り上がる場面を作らなければなりません。そうするとどうしても、原作と異なるシナリオにしないとハラハラドキドキ感を演出することが難しくなってしまうのでしょう。ストーリー展開も、アレンジする必要が出てくるわけです。


また、演じる俳優のイメージなどに合わせて配役が調整されるケースも散見されます。どの役を演じさせても、もともとの役者の素のイメージが強すぎて、ストーリー内の登場人物とイメージがあわなくなってしまったり、ドラマを盛り上げるために個性が強い役に仕立てあげられたりすることもあるでしょう。


さらに、誰もが観てもわかりやすく面白い展開にするために、わざと善と悪をはっきりさせるケースや、出演者の人数も決めなければならないなどの制作上の制約もあるでしょう。


こうしたことから、なかなか原作どおりのドラマ展開というのは、視聴率競争が激しい現在においてはあり得ないのかもしれません。昨年、「セクシー田中さん」の原作者が脚本家との意思疎通が図れず問題となったことがありましたが、視聴者だけでなく、ときには制作者側の思惑や思いが大きくずれたまま制作が進行してしまうケースもあるようです。


このように、私は原作を先に読了していた場合、実写ドラマはあまり見ない事が多いのですが、逆に、原作は未読の状態で先にドラマを観て面白かった場合は、小説を読むようにしています。


先に読むか、観てから読むかは人それぞれですので、どちらでもいいと思いますし、本を読む人が少なくなっているので、ドラマや映画をきっかけに読書家が増えれば嬉しいですね。実際、私はドラマ放送後に原作小説を読み、その作家さんの別の小説を芋づる式に読み進めていった経験もあります。何事も最初のきっかけが大事なのではないでしょうか?

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前回、インターネットの普及により、消費者の購買行動がAISAS(Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有))というステップを踏むようになったことをお話ししました。今回は、このAISASモデルが単純には説明できないほど、より複雑化してきたことについてお話しします。



AISASモデルが複雑化した理由として、以下のポイントが挙げられます。


1. 多様な情報源の増加

消費者が情報を得る手段が増え、ただ「検索」するだけではなく、SNS、動画プラットフォーム、オンラインコミュニティ、インフルエンサーの発信など、さまざまなチャネルから情報を収集するようになっています。これにより、AISASモデルの「Search(検索)」が複雑化し、より多様な情報源を考慮する必要が出てきました。


2. 消費者のカスタマージャーニーの多様化

消費者が情報を収集して行動に移すプロセスは、以前よりも多様化しています。例えば、ある消費者はSNSで商品に興味を持ち、そのまま購入に至るかもしれません。一方、別の消費者は検索を通じて複数の情報を比較し、口コミやレビューを参考にするなど、より複雑なプロセスを経ることがあります。これにより、モデル内の各段階が細分化され、複数のパターンが想定されるようになっています。


3. 双方向のコミュニケーションの重要性

企業から消費者への一方的な情報発信ではなく、消費者同士のコミュニケーションや、企業と消費者の双方向コミュニケーションが重要になっています。この結果、消費者がどの段階で情報を共有し、その共有が他の消費者の行動にどう影響するかが、より複雑に絡み合っています。


4. 購買行動後の重要性の増加

消費者が商品を購入した後、その満足度が次の「Share(共有)」に大きく影響するだけでなく、再購入やリピート購入にもつながります。そのため、「Action(行動)」後のフェーズがこれまで以上に重要視されるようになりました。これは、消費者が同じブランドや製品を長期間にわたって支持するための戦略が、より複雑化していることを意味します。

 

このように、消費者行動の多様化と、それに伴う情報収集や購買プロセスの複雑化により、AISASモデルもまた、より柔軟かつ多面的に理解する必要が出てきています。企業はこの複雑化したモデルを理解し、各段階で適切なアプローチを取ることで、より効果的なマーケティング戦略を構築することが求められています。

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著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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