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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

前回までの2回にわたり、PRの効果を数値で評価する方法について考察しました。PRの効果を正確に数値化するのは難しいものの、だからといって評価をしなくてよいわけではありません。では、具体的にどのように数値評価をすればよいのでしょうか?


PR会社の立場からすると、テレビで紹介されたこと自体がクライアントに喜ばれるため、それだけで十分と思われることもあります。しかし、実際にはテレビで取り上げられたからといって必ずしも売上や業績に結びつくとは限りません。そのため、PR活動の効果を測るための明確な指標が必要になります。


私が推奨するのは、メディアPR単体で評価するのではなく、WEB広告と組み合わせて効果を測定する方法です。WEB広告はWEBサイトへの誘導を目的としているため、メディアPRを実施した際にクリック率が向上したり、コンバージョンが増加したりすることが期待できます。そこで、PRを実施していないときのデータと比較することで、その効果を数値的に検証することが可能になります。


さらに、WEB広告はターゲットを絞って配信されるため、PRによって記事で紹介した内容がターゲットの関心と一致すれば、より高い反応が得られる可能性があります。例えば、PR実施前後でWEBサイトのアクセス数が増加した、コンバージョン率が上がった、広告のクリック率が向上したなどのデータを比較することで、PRの影響を客観的に評価できます。


PRの効果を単独で測るのは難しく、売上への貢献度を明確にしたいという企業側の要望を考慮すると、何らかの基準を設けて評価することが重要です。特に、現代のマーケティングではWEBの活用が一般的になっており、数値データが可視化されやすいことから、WEBサイトの指標を活用するのが最も分かりやすい方法といえます。紙媒体やテレビは、それ単体では数値評価が難しいため、WEB上のアクセスデータやコンバージョンと組み合わせたPR評価が、現在のトレンドになってきています。


メディアPRの効果を数値で評価するのは簡単ではありませんが、WEB広告などのデジタルマーケティングと連携することで、より明確な評価が可能になります。最終的には、売上向上などの具体的な成果につなげていくことが重要です。

 
 

1月27日にフジテレビで行われた記者会見について、前回は会見する側(フジテレビ)について考えを述べましたが、今回は出席したメディア(ジャーナリスト)について私の考えをお話ししたいと思います。


まず、会見中に怒鳴ったり、ヤジを飛ばしたり、フジテレビの出席者に対して一方的に不満をぶつける方がいたことが気になりました。記者会見は、会見する側と取材する側が対等な立場で成り立つものだと思います。会見する側は、メディアを通じて自分たちの考えを広く伝えてもらうために開きますし、取材する側は、その内容を読者や視聴者に伝えるために参加します。互いにメリットがあるからこそ成り立つ場であり、本来どちらかが優位に立つものではありません。


しかし、今回の会見では、一部の記者が上から目線で質問したり、納得できない回答に対して会見の進行を妨げたりする場面が見受けられました。確かに、フジテレビに落ち度があったことは間違いありませんが、記者会見の場は冷静な議論の場であるべきです。1回目の対応に不満をつのらせていた記者の中には「ようやく自分たちの主張が受け入れられた」「フジテレビが悪いのだから、当然こちらの言い分を聞くべきだ」という意識で臨んだ人もいたのかもしれません。


次に、記者会見は会見する側の話を聞く場であり、記者が自身の意見を述べる場ではありません。しかし、フリージャーナリストの中には、質問よりも自身の考えや意見を長々と述べる方が多く、その結果、会見時間が必要以上に長引いてしまいました。記者の役割は、的確な質問を通じて必要な情報を引き出し、それを記事や番組で視聴者に伝えることです。質問の意図を説明するために意見を述べるのは問題ありませんが、それが長くなりすぎると、他の記者の質問時間が削られてしまうことも考慮すべきでしょう。


さらに、記者会見の場は、ジャーナリストやYouTuberのパフォーマンスの場ではありません。今回の会見は注目度が高かったため、SNSでの注目を集めるために目立とうとする目的で参加した方もいたのではないでしょうか。実際、今回の会見は参加者の制限がなかったため、報道関係者であるかどうかを問わず出席できました。その結果、本来の報道目的とは異なる参加者が混じり、会見の進行に影響を与えた可能性があります。記者会見は報道を目的とした人々の場であり、それ以外の目的での参加は、取材を円滑に進めたい記者の妨げになるだけでなく、視聴者が必要とする情報を適切に伝えられなくなるリスクもあります。


今回の記者会見では、フジテレビだけでなく、取材する側であるジャーナリストにも厳しい批判が寄せられました。PR会社の立場から見ると、会見を開く側と取材する側は、お互いにとって有益な場であるべきです。私たちは、そのような記者会見の運営を目指して取り組んでいます。しかし、さまざまな事情が絡むため、双方が完全に納得できる会見を実現するのは簡単ではありません。それでも、最低限「誰にも迷惑をかけない記者会見」にすることが重要だと、今回の出来事を通じて改めて感じました。

 

 
 

前回の記事で、PRの効果を数値で評価することの難しさについてお話ししました。今回は、PR効果を測る一つの手法として使われる 広告換算値について説明します。


広告換算値とは、記事掲載や放送された内容を広告に置き換えた場合、その広告費用がどの程度かを算出し、PR活動の評価に利用する手法です。新聞や雑誌の記事なら、記事の大きさ(スペース)をもとに広告単価を掛け合わせて金額を算出します。


例えば、雑誌で半ページ紹介されたとします。その雑誌の1ページの広告掲載料が100万円であれば、100万×0.5=50万円 これが広告換算金額になります。


テレビでは、15秒のスポット広告料金を基準に計算します。


例えば、情報番組で1分間の紹介された場合、・15秒スポット広告が1本50万円であれば、50万×4本=200万円 これが広告換算金額となります。


ラジオも同様に、スポット広告料金を基準に広告換算金額を算出できます。


広告料金は、そのメディアの影響力によって決まります。たとえば、読者数が多い雑誌や新聞、視聴率が高いテレビ番組は広告料金が高く設定されており、広告換算金額が高いほど多くの人に情報が伝わった可能性があると推測できます。


広告換算値は、パブリシティ記事が広告換算でどれだけの価値を持つかを示す目安として有用です。しかし、以下の理由から、この方法に頼りすぎるのは危険です。


<広告とパブリシティの違い>

広告は企業が伝えたい内容を自ら発信するもので、パブリシティ記事は第三者であるメディアが発信します。メディアが発信する内容は信頼性が高く、情報が補足されることで、より分かりやすく伝わります。そのため、広告よりも効果が高いとされています。


継続評価のリスク>

テレビで紹介された場合、広告換算金額が高くなりやすいため、他のメディアで取り上げられても効果が低いと評価される可能性があります。しかし、新聞や雑誌で紹介された記事がWEBやSNSで拡散され、大きな影響を与えることもあります。


広告換算値を評価基準とする場合は、メディアごとの特性を考慮する必要があります。特にテレビは視聴者数が多い分、広告料金も高額になりがちです。また、金額に惑わされず、PRの総合的な効果を見極めたり、SNSやWEBでの拡散効果など、他の影響要素も考慮する必要もあるでしょう。広告換算値は便利な指標ですが、それだけに頼らず、メディアの特性やPRの目標に応じて柔軟に評価する必要があります。

 

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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