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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

これまで、このブログでPR講座を行ってきました。読んでいただいた皆さんには、PR戦略や具体的なPRの方法について、なんとなく理解していただけたかと思います。しかし、PRとよく混同される広報活動というものがあります。今回は、広報活動とPR活動の違いについて、わかりやすく説明します。


広報活動には、外部広報と内部広報の2種類があります。会社の内部に向けた広報活動が内部広報、会社の外部に向けた広報活動が外部広報です。これまでこのブログで話してきたPR活動は、外部広報にあたります。


内部広報の目的は社内の情報共有です。大きな会社では、自分の所属する部署以外のことを知らないことが多いため、社内の結束を図るためにも、会社全体の活動を知ることは重要です。


小さな会社でも、経営方針や目標など、全社員で共有すべき情報があります。これらの情報を社員に伝えるためにも、内部広報はとても重要です。具体的な業務としては、社内報や社内レターの作成が挙げられます。


一方、外部広報はPR活動とほぼ同じですが、微妙な違いがあります。外部広報は、販売促進やマーケティング部門での製品やサービスのPR活動とは異なり、メディアに会社のことを知ってもらうことが目的です。会社のブランド戦略やイメージ戦略が基本となります。


外部広報の活動は、メディアへの露出を図るだけでなく、メディアとの関係構築を重視します。そのため、マーケティング部門でのPR戦略のフォローや、会社のイメージを損なわないようなアドバイスを行うのが外部広報の役割です。


最近では、SNSを活用して自分たちで情報を発信する広報活動も増えています。こうした外部広報活動は、PR会社に依頼するよりも自分たちで行う方が効果的な場合があります。そのため、PR会社にコンサルティングやアドバイスを依頼するのが良いかもしれません。

 

 
 

ここ数回のブログでは、PR会社に対するいくつかの疑問(例えば、いつまで続けるのか、コンサルの必要性、予算など)について率直にお話ししてきました。今回は、よく聞かれる「PRするネタがない」という悩みについてお話しします。


特にメディアPRを進めるには、「新しさ」「面白さ」「役に立つ」の3つの要素が必要です。企業が毎月新商品や新規サービスを開発するのは難しいです。1年に1回でも大変です。そのため、「PRするネタがない」と感じることが多いでしょう。

しかし、PR会社としては「新情報がないとPRできません」と言ってしまうわけにはいきません。PR会社の仕事は、今ある情報をうまくメディアに紹介することです。


例えば、2024年の夏は猛暑となりました。メディアは猛暑に関する情報を探しています。ですから、暑さ対策の商品(例:ハンディ扇風機)などは、時流にあったコンテンツとして紹介されやすくなります。また、猛暑によって商売が繁盛した、あるいはその逆で生産が低下した……といった情報も、メディアにとって価値あるコンテンツとなるでしょう。


そこで、自社の商品やサービスを猛暑に関連付けてPRできないか…といったことを考えてみましょう。世の中のトレンドにあわせて既存の商品をうまく紹介することが大切です。


メディアは季節や時期によって取り上げるネタが決まっています。例えば、1月は受験、2月はバレンタインデー、3月は卒業式、4月は花見、5月は母の日、6月は結婚、7月は夏祭り、8月は夏休み、9月は敬老の日、10月はスポーツ・健康、11月は紅葉、12月はクリスマスといった具合です。


これに加えて、時事ネタを絡めて商品を紹介することで、メディアに取り上げられる可能性が高まります。例えば、猛暑を地球温暖化の観点から紹介するなどです。


メディアは常に自分たちが紹介したいネタに沿った情報を探しています。したがって、私たちが伝えたい情報を届けるのではなく、メディアが興味を持ちそうな文脈にのせて、上手く情報を提供するように心がけましょう。


このように、メディアに寄り添って商品のマーケティング戦略を考えることで、PR戦略が新たなマーケティング方策に繋がる可能性があります。


「PRネタがない」と感じるのは、自社の商品やサービスしか見ていないからかもしれません。メディアや一般消費者に寄り添うことで、ネタは意外と見つけやすくなるのです。


いかがでしょうか?このように考えると、PRのネタを考えるのは、それほど難しいことではないですよね!それでも自分たちではなかなか見つけられないという方は、PR会社と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。自分たちでは思いつかないような面白いアイデアが出てくるかもしれません。

 
 

少し前に、東京都知事選での、石丸伸二候補のSNSでのPR戦略について解説をさせていただきました。何かと話題のあった選挙戦でしたが、今回はポスターの問題についてPR会社の視線でお話しできればと思います。


今回の都知事選の掲示板を選挙目的でなく、PRの媒体として販売した政党があり、それを自分のPRとして利用した方がいました。法の網の目をかいくぐった……と言ってしまえばそれまでですが、ほとんどの人が彼らの行動に違和感を覚えたのではないでしょうか。


一般的に、私たちは、現在の社会を変えたいという強い意志をもった人こそが選挙に立候補するものだと思っています。ましてや、選挙後にほぼ没収されるのが確実な300万円の供託金を払ってまで、単に目立つためだけに立候補するというのは、やはり世間の常識から大きく外れていると言えるでしょう。


今回のポスター事件は、SNSが発達した副産物であると解釈できるかもしれません。SNSの利用者は、自分の投稿に関心を持ってもらうためにあらゆる方法を駆使します。その一つの策として、ポスターを掲示してアクセスを促すというのは、現代社会では斬新な方策といえるかもしれません。


PR会社を経営する自分も、よくこんなことを思いついたなと思った一方で、こうしたアイデア力を、もっとより良いPR方策に活かせるのではないかとも感じました。


もし、今後も選挙掲示板がPRのための媒体として活用することが許されるのであれば、今後さらに思いもよらない施策も登場するでしょう。ただし、それは法令を遵守する前提がなくてはならず、かつ市民が不快にならないものでなければなりません。


また、見るに耐えない政見放送を展開した候補者も散見されました。WebやSNS経由での情報発信が主力になったとはいえ、テレビの影響力もいまだに大きなものがあります。公共の電波に乗せて、5分30秒もの時間を完全に自分の好きなように独占できる機会は、他には考えられません。もし広告費用で換算したならば、数千万円規模となるでしょう。彼らにとって、300万円は高くなかったのかもしれません。


いろいろと物議をかもした都知事選ですが、こういうことで話題になるのはやはり望ましい状態ではありません。今後は、もっと立候補者が本当に知事としてふさわしい人物かどうかを有権者に効果的に伝えられるような広報を行うようにしてもらいたいものです。


選挙は、民主主義の根幹にかかわることですから、候補者の主張が都民に平等に公平に正しく伝わることが何よりも大事です。また、自己アピール目的のみで立候補する行為は、社会にいたずらに混乱を招く結果にしかならないので、今後は立候補の手続きをより厳正に実施する必要があるのかもしれません。


このあたりの論議は私のようなPRコンサルタントではなく、国会議員を始めとしたなど立法の専門家にゆだねたいと思います。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

顔写真 (2).jpg

中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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