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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

先日、地下鉄サリン事件から30年が経ったというニュースを目にしました。それに合わせて、テレビではオウム真理教に関する検証番組やドラマが放送されていました。

実は私も、当時丸ノ内線を使って通勤しており、タイミングが悪ければ事件に巻き込まれていた可能性があったのです。


事件当時もいつも通り丸の内線に乗りましたが、霞ヶ関駅に到着した電車のドアが開かなかった記憶があります。その日は午後から東京を離れる出張があり、午前中はその準備のため慌ただしく仕事をしていました。会社の外ではヘリコプターや救急車の音が響いていましたが、何が起こっているのかを確認する間もなく出張先へ向かいました。


その後、仕事を終え、夜は飲み会に参加して知人の家に泊まったため、東京で大変なことが起こっていたことを知らないまま翌日自宅に戻りました。帰宅すると、留守番電話に3〜4件のメッセージが入っており(普段そんなことはないのですが)、再生してみると兄が何度も心配して電話をしていたことがわかりました。

この時点で、地下鉄でサリンが撒かれたことは知っていましたが、東京が大騒ぎになっていることまでは理解していませんでした。慌てて実家に電話し、「無事だよ」と伝えたところ、兄から「もっと早く連絡しろ!」と怒られたことを、事件そのものよりも強く覚えています。


オウム真理教は、私が住んでいた杉並区とも関わりが深く、教団の代表だった麻原彰晃もこの地域から立候補していました。駅前では歌と踊りを交えた選挙活動を頻繁に行っており、私も彼を実際に見たことがあります。その当時、まさか日本を震撼させる事件を起こすとは思いもせず、単に「選挙活動が邪魔だな」と感じていただけでした。


今回、30年の節目の報道を見て当時のことを思い出しましたが、今の時代なら私は兄に怒られることはなかったかもしれません。というのも、今ではスマートフォンが普及し、どこにいてもリアルタイムで情報を得ることができます。事件当日も、スマホがあれば地下鉄サリン事件の速報を知り、東京が大混乱に陥っていることや、自分が乗っていた電車が危険だったこともすぐに把握できたでしょう。また、メッセージアプリや電話を使えば、兄に簡単に連絡を取ることもできました。

私自身、比較的早く携帯電話を持ちましたが、事件当時はまだ所有していませんでした。確か、事件の1年後くらいに購入したような気がします。


地下鉄サリン事件をきっかけにスマホの便利さを改めて感じるのも不思議な話ですが、一方で、現代のSNSの影響力を考えると、オウム真理教が当時スマホやSNSを活用していたら、どのような形で布教を広げていたのかと考えてしまいます。そして、逆にテクノロジーの進化によって、こうした事件を未然に防ぐことはできたのか——そんなことを思うと、単なる妄想では片付けられない気もします。

事件から30年が経ちましたが、あの日のことはなんとなく記憶に残っていて、娘にこの話をしたら驚いていました。社会の変化とともに、情報との向き合い方も大きく変わったことを実感してしまいます。

 

 
 

これまで3回にわたり、PR戦略の基本となる5W1Hのうち、「What(何を)」「Who(誰に)」「Why(なぜ)」の3つについてお話ししてきました。今回は、残りの「When(いつ)」「Where(どの媒体に)」「How(どのように)」について解説します。

 

PR会社はクライアントの方針を踏まえ、「When(いつ)」「Where(どこに)」「How(どのように)」の3要素を軸に戦略を提案する役割を担っています。「What」「Who」「Why」についてもアドバイスできますが、それはあくまでクライアントの考えをもとにした調整です。一方で、「When」「Where」「How」はPRの成功を大きく左右する要素であり、PR会社が最も力を入れるポイントでもあります。

 

「When(いつ)」— PRのタイミングが成功を決める

PRにおいて最適なタイミングを見極めることは非常に重要です。どんなに魅力的な情報でも、発信のタイミングを誤るとメディアに取り上げられにくくなります。そのため、PR会社は戦略的にスケジュールを組み、計画的に進めていきます。

しかし、現実にはクライアント側の事情でスケジュールが遅れることも少なくありません。例えば、社内の承認に時間がかかる、準備が間に合わないなどの理由でPRの発信が遅れると、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあります。PR会社としては、クライアントの事情とはいえ、スケジュールの遅れによる影響を考えると責任を感じるものです。

 

「Where(どこで)」— 適切な媒体を選ぶ重要性

クライアントから「このメディアに紹介されたい」という要望を受けることはよくあります。しかし、そのメディアがターゲットに合っているとは限りません。

例えば、若者向けの商品・サービスなのに「テレビで紹介されたい」という希望がある場合、注意が必要です。現在の若者はテレビをあまり見ないため、SNSを活用したPRのほうが効果的です。実際、最近のテレビ番組はSNSで話題になった情報を取り上げることが増えているため、まずSNSでバズを生み、それがテレビに波及する流れを狙うのも一つの手です。ターゲットに最適な媒体を選ぶことが、PR成功の大きなカギとなります。

 

「How(どうやって)」— PRの手法と予算のバランス

「How」は、PR会社が最も力を入れる部分であり、具体的な企画や施策を考えるフェーズです。


ここで欠かせないのが「How much(いくらで)」という視点です。PRにはコストがかかるため、予算に応じた施策を選ぶ必要があります。予算が多ければ幅広い施策が可能ですが、限られた予算では優先順位を決めて戦略を立てなければなりません。


また、「How」はPR会社だけが決めるものではなく、クライアントと共に考えることが重要です。クライアントの意見を取り入れつつ、効果的なPR施策を練り上げることで、より実現性の高い企画が生まれます。一方で、PR会社任せにするのも、逆に自社の考えに固執しすぎるのもよくありません。柔軟に意見を出し合うことで、最適なPR施策を導き出すことができます。

 

PRを成功させるには、「When(いつ)」「Where(どこで)」「How(どのように)」を戦略的に考えることが不可欠です。


  • 「When(いつ)」 → 最適なタイミングを見極める

  • 「Where(どこで)」 → ターゲットに合った媒体を選ぶ

  • 「How(どうやって)」 → 予算や目的に合わせた手法を考える


これらの要素をしっかりと整理し、クライアントとPR会社が協力しながら最適な戦略を構築することが、成功への近道です。

 
 

2024年末に行われた兵庫県知事選でPR会社の社長が注目を集めたことで、PR会社そのものへの関心が高まりました。政治の世界では、PR活動が支持を得るための重要な手段であることは間違いありません。これまでにも選挙や政治に関する考えをこのブログで紹介してきましたが、最近の政治におけるPR戦略について気になった点をお話ししたいと思います。


昨年の選挙では、東京都知事選での石丸氏の善戦、衆議院選挙での国民民主党の躍進、兵庫県知事選での齋藤知事の再選などが話題になりました。これらに共通するのは、SNS戦略がうまく機能したことです。


これまでの選挙PRは、ポスター、政見放送、街頭演説などが中心でした。既存メディアは、公職選挙法や公平性の観点から、選挙期間中に特定の政党や候補者を積極的に取り上げることが難しく、報道の中心は党首討論や選挙結果の予測に限られていました。一方、SNSは誰でも自由に情報を発信できるため、選挙期間中でも候補者が自分の考えを発信できる強力なツールになっています。


しかし、SNSには自主規制がないため、誤った情報が広まるリスクもあります。多くの人が発信する情報は、一見すると信憑性がありそうに見えますが、その正しさを確認する手段を持たない人も多いのが現実です。


兵庫県知事選では、「オールドメディア vs. SNS」という構図が生まれ、SNSで齋藤知事を知った人たちが、彼を批判した既存メディアを信じないという現象が起こりました。SNSでは「既存メディアの情報は間違っている」と主張する人が多く見られました。しかし、PRの視点から見ると、新聞社やテレビ局が裏付けを取らずに報道することはほとんどありません。ただし、今回の報道はワイドショー的な側面が強く、報道機関には事実を正確に伝える役割があることを改めて考えてほしいと感じました。


一方、SNSの投稿は、誤った情報であっても訂正されることが少なく、一度発信すると「自分の意見」として固定化されやすい傾向があります。そのため、間違いを認めるよりも、相手が間違っていると主張し続けることになりがちです。


政治において自分の主張を実現するには、選挙で勝つことが必要です。そのため、イメージ戦略が重要になり、PRの手法が勝敗を左右することになります。齋藤知事のSNS戦略を担当したPR会社の施策は、既存メディアによって損なわれた齋藤知事のイメージを回復するために、よく考えられたものでした。


今後、選挙におけるSNSを活用したイメージ戦略はますます主流になってくるはずです。しかし、ルールが確立されないと、誤った情報が氾濫し、有権者が正しい判断を下せなくなる恐れもあります。


SNSの選挙PR戦略によって若者が政治に関心を持つようになったのは良いことですが、SNS上での選挙活動のルールをどうするかは大きな課題です。規制をすれば表現の自由を損なう可能性があり、規制しなければ誤情報の拡散が止まらないというジレンマがあります。現時点では、どのような対応が最適なのか、私にも明確な答えは見つかりません。


今年の参議院選挙までに、この問題に対する結論が出るとは考えにくいですが、明らかなのは、今後より一層各政党や候補はSNSの活用に力を注ぐことになるはずです。2024年の一連の選挙結果を踏まえて、彼らがどのようにパフォーマンスを行い、結果を残すのか注目してみたいと思っています。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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