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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

前回、若年層をターゲットにしたPRが難しくなってきた背景について触れましたが、今回はそのターゲットにどうアプローチすべきかを考えます。


現代では、情報収集の方法として主に二つの経路が考えられます。ひとつは、ネット上で自分から必要な情報を探す方法。もうひとつは、友人や知人から得る情報です。特にインターネット上で、ターゲットにどうやって情報を届けるかが、PR戦略を成功させるための鍵となります。


顧客の行動を理解する:ピラミッドモデル


商品やサービスに興味を持つ顧客は、メディアを介して段階的に購入に至ります。この顧客の行動を理解することで、効果的なPR戦略を設計できるのです。顧客の行動は、SNSをぼんやりと見ている段階から、最終的に購入する段階までピラミッド型に分けられています。


 

1. 受動的なSNS顧客層

ピラミッドの下層に位置する「F」から「D」の顧客層は、主にSNSから情報を受け取っている段階です。彼らはまだ商品やサービスに強い関心を持っていないため、投稿やプロフィールページを漠然と眺めているだけです。この層に対しては、ビジュアルが印象的で、ストーリー性のあるコンテンツが効果的です。過度な情報を与えるのではなく、受動的に見ているだけでも引き込まれるコンテンツを提供しましょう。


2. 能動的な検索顧客層


一方、ピラミッドの上層「C」から「A」に位置する顧客は、すでに商品やサービスに対して具体的な興味を持っており、積極的に情報を探しています。Googleなどの検索エンジンを使って、自分が知りたい情報を詳しく調べ、購入を検討します。この顧客層にアプローチするには、SEOを強化し、彼らが求める具体的な情報にすぐアクセスできるようなコンテンツを用意することが重要です。


3. メディアの使い分けが成功の鍵


ピラミッド図の右側では、「SNSの顧客層(潜在層)」と「Googleの顧客層(顕在層)」の違いが示されています。SNSを利用する潜在層は、自分が求めていない情報でも目に入る「受動的メディア」の影響を受けます。対して、検索エンジンを使う顕在層は、自分が必要とする情報を自ら探す「能動的メディア」を活用します。

 

この違いを理解し、SNS層にはバズを狙った広告や視覚的なコンテンツを提供し、検索層にはSEO対策や充実した商品説明を用意することが、PR戦略の成功に繋がります。


顧客がどの段階にいるかを把握し、それに合わせたメディア戦略を選ぶことがPR活動の成否を左右します。潜在層と顕在層、それぞれのニーズに合ったアプローチを取り入れることで、ターゲットにより効果的にリーチできるでしょう。

 
 

先日、弊社の企画で「都内5美術館 2025年企画展合同記者発表会」を開催しました。このイベントは、コロナ禍では一時中止となっていましたが、今回で9回目を迎えます。


この企画の面白さは、通常はライバル関係にある都内近隣の美術館が、一堂に会して一緒に記者発表会を行うという点です。PR業界では、競合同士の協力は珍しいため、意外に思う方も多いでしょう。実は私も最初はそう考えていたのですが、美術館の方に話をしてみると「一緒にやる方がむしろ良い」と前向きな反応をいただき、無事に実現することができました。


発表内容としても、次年度の展覧会ラインナップを紹介する形にしたのが良かったようです。近年、雑誌業界では厳しい状況が続いていますが、美術館の年間スケジュールを紹介する雑誌は好調で、記者や編集者、ライターの方々からも関心を集めまています。


さて、記者発表会を企画する際にまず重要なのは、どれだけのメディアに出席してもらえるかを考えることです。もちろん発表内容も大切ですが、PR会社としては、内容そのものはクライアントが決定するため、私たちは他の部分でアドバイスを行います。たとえば、記者が出席しやすい場所を選ぶことです。駅から近い場所や、新しい話題のスポットなどが理想的です。もちろん、場合によっては自社の会議室で開催されることもありますが、可能な限り出席者に配慮した提案をしています。


次に、時間の設定も大切です。短すぎると情報不足に感じられ、長すぎると忙しい記者に敬遠されてしまいます。理想的には1時間程度ですが、今回の合同記者発表会では、5館それぞれに15分の持ち時間を設定し、全体で1時間15分に加えて、館長トークセッションなどを盛り込み、2時間を超える内容になりました。


メディアからは「もっと参加館を増やしてほしい」との要望もありましたし、参加美術館からは「15分では十分に説明できない」との声も聞かれました。しかし、参加館を増やしたり、持ち時間を増やしたりすると全体の時間が長くなりすぎるため、現状の形式で落ち着いています。今後も、より良い方法があれば改善していきたいと考えています。


記者発表会に似たものとして記者会見があります。特に「お詫び会見」がよく行われますが、これは長時間にわたることが一般的です。記者の質問が尽きるまで対応する必要があり、途中で打ち切ると批判を招きかねません。そのため、時間配分には常に悩まされますが、誠意を示すためには、質問に全て答える姿勢が重要だと感じます。


最後に、弊社が企画した合同記者発表会には、毎回60名以上のメディア関係者にご出席いただいており、関係者の皆さまに心から感謝しています。今後も引き続き、皆さまにご満足いただけるイベントを目指していきます。

 

 
 

これまで、インターネットの普及により消費者行動の変化についてお話してきましたが、今回は、それに伴ってターゲット層に変化がみられてきたことについてお話ししたいと思います。


PRを進める上で、ターゲット層の選定が非常に重要であることは、これまでのPR講座でも繰り返しお伝えしてきました。



かつては、上の表に示すように、年齢や性別を基準にしたターゲット層が設定されていました。そのターゲット層に対して、どのようにアプローチするかがPR戦略の課題でした。


例えば、若い女性向けの化粧品を販売する場合、F1層向けのメディアを選び、そこで人気タレントを起用したCMを制作するのが一般的なPR戦略でした。


現在でも、この考え方が完全になくなったわけではありませんが、実際には年齢や性別で一括りにしたターゲット設定では、PRがうまくいかないケースが増えています。これは、多様性が重視される現代において、好みや価値観を年齢や性別でひとまとめにすることが適切でない場合があるからです。


例えば、私が小学生だった頃は、男の子は黒のランドセル、女の子は赤のランドセルを持つのが一般的でした。しかし、現在の小学生は、様々な色のランドセルを選ぶことが当たり前となり、男の子がピンク、女の子が青のランドセルを選ぶことも普通になりました。


もちろん、年齢を基準としたターゲット設定が今でも有効な場合もあります。例えば、アンパンマンのおもちゃは幼児に喜ばれますが、小学生にプレゼントすると不評を買うかもしれません。


しかし一方で、若い世代でも昭和の歌謡曲が好きな人がいたり、60代でもアイドルの追っかけをしている人がいたりします。また、スポーツが嫌いな子供もいれば、60歳を過ぎてもスポーツを続ける人もいます。


さらに、年齢や性別でターゲットを括ると、差別的だと非難されるリスクもあります。PRを進める上で、年齢層や性別を考慮することは依然として重要ですが、ターゲットが明確でない場合、その層に向けてPRを行っても、関心を持たれない可能性が高いです。


特に、若年層をターゲットとしたPRのアプローチは、現代では難しい局面にあると言えます。この点については、次回以降でさらに詳しくお話ししていきます。

 

 

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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