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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

先月、還暦を迎えました。かつて「60歳」と聞くと、自分にとっては「結構な年上」という感覚で、なんとなく“おじさん”を超えて“おじいちゃん”に近いイメージがありました。でも、実際になってみると、自分の中の感覚は若いころとあまり変わっていない気がします。


もちろん、体力の衰えは感じるようになりましたが、精神的にはまだまだ元気なつもりです。ただ、自分では気づきにくいのが“おじさん”らしさなんでしょうね。


「ネットで見かけた“おじさん度”診断」を試してみましたが、これも今ひとつ当たっている気がしませんでした。もう“実際におじさん”なので、結果が高いと言われてもそれほど気にしないのかもしれません。


ところで、“おじさん度”が高いって、本当に悪いことでしょうか?なんとなく世の中には、「若者が正しくて、おじさんが間違っている」という風潮がある気がします。確かに、自慢話ばかりするおじさんや、偉そうに指示するおじさんを見ると「うーん…」と思うことはあります。でも、それを理由に「おじさんはみんなダメ」とされるのには、ちょっと納得できません(笑)。


若い世代から「今の若い人は…」というと「理解が足りない」と批判されがちですが、逆に若い人が「おじさんってさ…」と話すと、周りが共感する場面をよく見かけます。これってちょっと不公平じゃないでしょうか?


おじさん世代は、若いころの時代も経験しているからこそ、若い人の気持ちも分かるつもりでいます。「自分が若いころはこうだった」と話したくなるのも、経験があるからこそです。一方で、若い人が「自分が年をとったら…」と話すことは少ないでしょう。経験がある人の意見が軽視されてしまうのは、どこか不思議な感じがします。


それに、今若い人も、いずれはおじさん・おばさんになるわけです。自分の将来の姿を否定するのは、ちょっともったいない気がしませんか?


最後に、私が大好きなドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で、石田ゆり子さんが言った言葉を引用して締めくくりたいと思います。このセリフに、年を重ねることの意味が詰まっているように感じます。

 

百合ちゃんの名言:「自分に呪いをかけないで」あなたはずいぶんと自分の若さに価値を見出しているのね。でも、今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって辛いんじゃないかな?私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその一つ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい。

(逃げる恥だが役に立つ11話より)

 
 

前回の記事では、若者の「推し活」を通じて、関心がない情報にはなかなか興味を持たないというお話をしました。今回は、インターネットの仕組みがその傾向をさらに強めている現状についてお話しします。


インターネット上では、サジェスチョン機能や広告が私たちの過去の検索や興味に基づいて表示されるため、自分が関心を持っている情報が優先的に出てきます。たとえば、SNSやニュースサイトでも、普段よく見るジャンルの情報ばかりが目に入り、他の新しい情報が表示されにくくなっているのです。


この仕組みは便利な一方で、興味の外にある新しい情報に触れる機会が減り、特に若者に対しては、自分の好きなこと以外の情報が届きにくくなっています。そのため、企業や団体が新しい商品やサービスを若者に伝えたいと思っても、関心がなければその情報がなかなか届かない、という課題が生まれています。


こうした状況を打破するためには、若者に寄り添ったPR戦略が必要です。単に伝えたい情報を一方的に発信するだけでは、彼らの関心を引くことはできません。そこで、若者が興味を持っているものをうまく活用しながらPRを進めるアプローチが有効です。ここでは、4つの施策をご提案します。


PR施策1:コラボレーション戦略


よく見かける例が、アニメキャラクターとのコラボ商品です。若者に人気のキャラクターとコラボすることで、キャラクターを通じて商品やサービスを認知してもらえ、推しキャラのグッズとして購買行動に繋げることができます。


PR施策2:インフルエンサーの活用


影響力のあるインフルエンサーを使うことで、若者に新しい情報を届けることができます。彼らが商品やサービスを紹介すると、そのフォロワーたちが自然と興味を持ち、SNSを通じて情報が広がっていきます。

PR施策3:若者に楽しんでもらえるコンテンツの作成


インフルエンサーに頼らなくても、若者が楽しめるコンテンツを提供するのも一つの方法です。たとえば、人気アーティストの曲を使ったダンス動画や、SNSでバズるようなクリエイティブなコンテンツを制作すれば、若者の間で広がりやすくなります。


PR施策4:リアルな体験を通じたプロモーション


オンラインだけでなく、リアルな体験型イベントも効果的です。ポップアップイベントやコラボイベントで、新しい商品やサービスに実際に触れる機会を提供することで、興味の外にある情報にも自然とアクセスしてもらえます。

 

ただし、こうした手法を使っても、必ずしも伝えたい情報が正しく伝わるとは限りません。場合によっては、PRメッセージがかえって反感を買うこともあり得ます。特にSNSではネガティブな意見の方が広まりやすいという特性があるため、若者に向けたPR戦略は慎重に考える必要があります。


若者に寄り添ったPRを展開する際は、彼らの反応やリスクも十分に考慮し、より丁寧な戦略設計が求められるのです。

 
 

大学時代、私は落語研究会(落研)に所属していました。当時は、宴席で「落語をやって!」と頼まれることもありましたが、大学を卒業して30年以上が経ち、その間一度も落語をしていないので、今では一席まるまる覚えているわけではありません。


落研出身だから「話がうまい」と思われることもありますが、実際には噺家さんでも即興が得意ではない方もいるので、落語ができるからといって話し上手というわけではないのです。


確かに、人を笑わせるのが好きで、場を盛り上げることは得意かもしれませんが、それは落語をやっていたからではないと思っています。


とはいえ、落語が嫌いというわけではありません。ただ、演じるのがそこまで好きではないだけで、今でも落語会のプロデュースなどには関わっています。


落語=笑点ではありません!


落語に対してよくある誤解のひとつが、「落語=笑点」というもの。テレビで唯一全国的に放送されているのが『笑点』なので、仕方ない部分もありますが、あれは「大喜利」といって、落語の合間に行う言葉遊びであり、落語とは別物です。


落語とは、簡単に言えば「落ち」がある話芸のこと。人によっては「落語はただ笑える話」と思っているかもしれませんが、実は人情噺や怪談話などもあり、時には泣けたり、怖さで身が縮むこともあります。


古典落語と新作落語


落語家が自分で話を考えていると思われがちですが、実際に演じられている多くは「古典落語」といって、代々引き継がれてきたものです。自分で新しい話を作る「新作落語」を演じる噺家もいますが、全体から見ると少数派です。


古典落語が中心なので、同じ話を何度も聴くことがあります。私は本は一度読むと再読することが少ないのですが、落語は何度聴いても笑えたり、感動したりします。もちろん噺家によって出来に差が出ることもありますが、何度聴いてもおもしろいと感じるのが落語の魅力です。


落語の魅力は一人で演じること


落語は、一人で複数の登場人物を演じる芸能です。映画や舞台で言えば、主演から助演までをすべて一人でこなし、演出や監督も自分で担当するようなもの。もし新作落語をやるなら、脚本まで自分で書くことになります。


落語を聴く側は、噺家の話を通して、自分なりに登場人物や舞台を想像(創造)しながら楽しむことが求められます。だからこそ、同じ話を何度聴いても、噺家の技量や自分の想像次第で新たな発見があり、飽きないのです。


噺家の技量が大切


落語を楽しむ鍵は、受け手の想像力を引き出す噺家の技量にあります。上手い噺家は、自然に観客の想像力をかき立て、登場人物が生き生きと感じられます。一方で、下手な噺家だと想像がしにくく、物足りなさを感じることもあります。


さあ、寄席に行ってみよう!


このブログを読んで落語に興味が湧いた方は、ぜひ一度寄席に足を運んでみてください。4時間ほどで10人ほどの噺家の落語を楽しむことができるので、きっと素晴らしい体験ができるはずです!

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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