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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

ここ数回にわたり、5W1Hを活用したPR戦略の立て方について解説してきました。しかし、どれだけ優れた戦略を立てても、PRがうまくいかないことがあります。 その原因の多くは、「やってはいけないこと」を無意識のうちにしてしまっているケースです。


今回は、PRで避けるべき3つのポイントについてお話しします。

 

① 取材の制限や規制をしない

メディアPRを行う際、メディアに取材を依頼しているにも関わらず、「この話題には触れないでほしい」「この写真は撮らないでほしい」などと制限を設けるケースがあります。しかし、そのような対応をするなら、そもそも取材を依頼する意味がありません。


PRの場では、企業側とメディアは対等な立場であるべきです。取材を「させてやる」といった上から目線の対応は厳禁ですし、逆にメディア側も「取材してやっている」という態度をとるべきではありません。


もちろん、正当な理由がある場合の取材制限は問題ありません。例えば、人権への配慮や著作権・肖像権に関わる部分は、メディア側も納得するはずです。しかし、特に理由もなく取材を規制してしまうと、メディアとの信頼関係が崩れ、最悪の場合「取材を拒否された」とネガティブに報じられることもあります。結果的に、PRが逆効果になってしまう可能性があるのです。

 

② PRの本来の目的を見失わない

PRイベントを行う際、社長の記者会見やゲストの招待などに力を入れるあまり、本来の発表内容が二の次になってしまうケースがあります。


例えば、複数の企業が共同でイベントを開催する場合、各社の調整に時間がかかることがあります。また、イベント制作会社や芸能プロダクションなど、関係者が増えるほどさまざまな思惑が交錯し、結果として発表内容が変更されることもあります。


しかし、PRイベントの本来の目的は、発表内容をしっかり伝えることです。イベント自体を成功させることに意識が向きすぎると、メディアの記者への対応が後回しになり、肝心のPR効果が薄れてしまうことも。イベントを企画する際は、「何のためにこのイベントを行うのか?」を常に意識し、本来の目的を見失わないようにしましょう。

 

③ メディア対応はスピーディーに

メディアからの問い合わせ対応が遅れると、せっかく記事にしてもらえるはずだったチャンスを逃すことになりかねません。最近は、連絡手段としてメールを利用するケースが増えていますが、初期対応はメールで問題ないとしても、できるだけ電話対応を併用するのが望ましいでしょう。


なぜなら、メールのやり取りでは新たな質問が生じた際に時間がかかるため、メディア側にとっても効率が悪くなってしまうからです。電話であれば、その場で追加の質問に答えられるため、スムーズな対応が可能になります。


また、すぐに対応できない場合でも、「回答に時間がかかる」ことを早めに伝え、期限を明確にすることで、メディア側の理解を得やすくなります。逆に、期限を過ぎても連絡がない場合や、対応が曖昧な場合は、記事自体が見送られるだけでなく、最悪の場合、ネガティブな記事につながる可能性もあります。

 

PRがうまくいかない原因の多くは、企業内部の問題によるものです。しかし、メディアにとっては内部事情など関係ありません。もし「取材の制限を設ける」「イベントの目的を見失う」「メディア対応が遅れる」といった問題があるなら、そもそもPR活動を行わないほうがよい結果になることもあります。


PRの成功には、あらかじめ社内の課題をクリアにし、メディアと良好な関係を築くことが不可欠です。事前準備を万全にし、効果的なPRを目指しましょう。

 
 

前回のコラムでは政治とPRの関係についてお話ししましたが、今回は経済とPRについて考えてみたいと思います。


正直なところ、経済のPRはとても難しいテーマです。企業やお店が自社の商品やサービスをPRし、売上を伸ばすことは、最もわかりやすい経済的なPRの一例でしょう。また、個人が宣伝で知った商品を購入することも、PRの結果としての経済行動と言えます。


しかし、政治のようにPRが大きな話題になることは少なく、経済に関するPRはメディアで取り上げられにくい傾向があります。特定の企業をひいきしていると思われることを避けるため、メディアが慎重になっているのかもしれません。そのため、経済分野におけるPRの中心は、メディアPRよりも広告や宣伝に偏りがちです。


それでも、テレビや雑誌では「安いお店」「お得な商品」「コスパの良いサービス」などが頻繁に特集され、多くの人が関心を寄せています。確かに、生活者にとって役立つ情報ではありますが、経済学部卒業の私からみると,「安いこと」が本当に良いことなのか、一度立ち止まって考えてみる必要があるのではないかと思うのです。


日本経済は「失われた30年」と言われる長いデフレの時代を経験しました。その結果、かつて世界第2位だった経済大国の地位を失い、国力の低下が懸念されています。日本では、1970年代の石油ショックによるインフレの記憶が根強く残っており、物価上昇への恐れが大きいように感じます。私自身も当時の「狂乱物価」をうっすらと記憶していますし、高齢者世代にとってはインフレの怖さは実体験として刻まれているでしょう。


しかし、日本経済が長らく成長しなかった一因として、「価格を上げること=悪」という価値観が定着してしまったことも見逃せません。その原因の一端は、新聞やテレビといった各メディアの報道姿勢に求めることができるでしょう。彼らは、本来、経済成長には適度な物価上昇が伴うものだという経済学の基礎知識を伝えるよりも、とにかく「安いものこそ正義なのだ」という観点から報道し続けた結果、人々の間に「安いものはありがたい」という意識が広まってしまったのです。その結果、企業も価格転嫁を避けるようになり、デフレが長引いてしまいました。


最近になってようやく物価が上昇し始めましたが、未だに「生活が苦しくなる」という報道ばかりが目立ちます。確かに、賃金が上がらないまま物価だけが上昇すれば生活は厳しくなります。しかし、本来の経済成長とは、物価上昇とともに賃金も増えることで実現するものです。ところが、日本企業はリスク管理の名のもとに内部留保を増やすばかりで、なかなか賃金には反映されていません。最近になって人手不足の影響で新入社員の給与が上がり始めましたが、まだ一部の企業に限られています。


経済のPRは、どうしても庶民の目線では「安さ」にフォーカスされがちです。しかし、国全体の視点(マクロ的な視点)から、経済成長を後押しするようなPRがもっと求められているのではないでしょうか。

 

 
 

PR戦略を立てる際、5W1H(What, Who, Why, When, Where, How)のフレームワークを活用することで、より整理された計画を立てることができます。本ブログでは、これまで4回にわたりそれぞれの要因について解説してきました。今回は、最終的にこのフレームワークを使ってPRのストーリーをどうやって立てていくのかを整理し、最終的にPR戦略全体をどのように組み立てるべきかをまとめます。

 

1. PR戦略は「知らないこと」から考える

PRの目的は「ターゲットに適切な情報を届け、行動を促すこと」です。そのためには、「何を知らないのか」「誰が知らないのか」「なぜ知らないのか」を明確にすることが重要です。例えば、野球観戦をPRする場合、若い女性が「野球の楽しさ」を知らない理由を探ります。

  • ルールが分からない?

  • 球場に行く機会がない?

このように「知らないこと」に着目し、5W1Hに当てはめることで、効果的なPR施策が立てられます。

 

2. 5W1Hの整理

  • What(何を):PRで伝える本質的なメッセージ

  • Who(誰に):ターゲットを特定し、行動特性を分析

  • Why(なぜ):ターゲットが情報を知らない理由を掘り下げる

  • When(いつ):最適な発信タイミングを決める

  • Where(どこで):媒体選定(SNS、テレビ、ニュースなど)

  • How(どのように):具体的なPR施策を企画(SNS活用、体験イベントなど)

 

3. 「知らないこと」からストーリーを作る

単に情報を伝えるだけでなく、ターゲットが「興味を持てる」ようなストーリーづくりが必要です。


  1. 課題提起(知らないこと):「若い女性の70%が野球観戦未経験!」

  2. 共感を生む要素:「でも初心者向けの楽しみ方があるんです!」

  3. 解決策(PR施策):「ルール解説付き観戦イベントを開催!」


このように、「なぜ知らないのか?」を掘り下げ、ストーリーに落とし込むことで、ターゲットの関心を引き、行動を促すことができます。

 

PR戦略を立てる際には、5W1Hをフレームワークとして活用し、「知らないこと」に着目することで、より効果的な施策を生み出すことができます。


PRの成功には、ターゲットの視点に立ち、知られていない情報をどう伝えるかが鍵となります。5W1Hを活用し、効果的なPR戦略を構築していきましょう!

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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