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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

前回のブログでは、PR戦略を5W1Hの視点で考え、「What(何を)」「Who(誰に)」「Why(なぜ)」の3つが特に重要であることを説明しました。今回は、その中でも「Why(なぜ)」に焦点を当て、PR方策を考えるうえでのポイントを解説します。


PRの目的やターゲットを明確にするためには、「なぜ」を掘り下げることが不可欠です。「なぜ知らないのか」「なぜ興味がないのか」を考えることで、より効果的なPRの方向性を見出せます。

例えば、前回の野球の例を振り返ると、子どもが野球を知らない理由として、

  • サッカーの方が人気だから

  • 野球をする場所が身近にない

  • 道具をそろえるのに費用がかかる といった理由が挙げられます。


これらの「Why(なぜ)」を明確にすることで、適切なPR戦略を立てることが可能になります。


そこで、「なぜ」を掘り下げることで、ターゲットごとに異なるPR戦略を考えられます。


例1:子どもに野球の魅力を伝える

  • 野球をする場所がない → 少年野球チーム向けに球場を開放

  • 道具の費用が負担 → グローブを寄付するキャンペーンを実施

例2:女性観客を増やすための施策

  • 球場に行ったことがない → 野球観戦と楽しめるイベントを企画(例:エステ付き観戦プラン)

このように、「Why(なぜ)」を考えることで、ターゲットに最適なPR施策が見えてきます。

 

ただし、「Why(なぜ)」を考えて導き出したPR施策が、実際に実現可能かどうかも重要です。たとえば、球場にエステサロンを設置するというPR施策は話題性があるものの、多額の費用がかかる可能性があります。その結果、PRによって観客が増えたとしても、費用対効果が合わない場合も考えられます。

そのため、PR施策はマーケティング戦略や経営戦略と連携させて考える必要があります。PRの目的が企業の方向性と合致しない場合、結果として期待した効果が得られない可能性もあるからです。

 

「Why(なぜ)」を深掘りすることは、PR戦略を成功させるうえで極めて重要です。しかし、考えたPR施策が企業の経営戦略やマーケティング戦略と整合性を持つかどうかも検討しなければなりません。「なぜ」を意識しつつ、現実的なPR施策を設計することで、より効果的な情報発信が可能になります。

PR戦略を考える際は、「Why(なぜ)」を丁寧に掘り下げながらも、実現可能性や企業全体の方向性とのバランスを見極めることが求められます。

 
 

最近、仕事でも日常生活でも、マニュアルに沿って進める場面が増えている気がします。スマホの操作やデジタル機器の使い方も、マニュアルを見れば解決できることが多いですよね。でも、中には「マニュアルを読むのが苦手(というか嫌い)」という人もいて、わからないことがあると調べずにすぐ人に聞いてしまう…なんてこともあるのではないでしょうか?


私も会社を経営する立場として、マニュアルの重要性はよく理解しています。特定の社員しか知らない業務があると、その人がいなくなったときに困りますし、業務をスムーズに共有するためにはマニュアル化が欠かせません。また、マニュアルを作る過程で、業務の流れを見直し、改善点を発見することもできます。


一番のメリットは、新しく仕事を始める人やまだ慣れていない人にとって、いちいち質問しなくてもマニュアルを見れば仕事を進められること。何度も同じことを聞かれる側としても、そのほうが助かります。正直、同じ質問を何度もされると「いい加減に覚えてほしい…」と思うこともあります(さすがに口には出しませんが…)。


一方で、マニュアル通りの対応をされると、逆にイライラすることもあります。特に最近の通信サービスやスマホの契約は、プランが複雑だからか、電話で申し込むと何度も確認を求められます。間違いのない対応をするためには仕方ないのかもしれませんが、必要以上に細かく説明されると、だんだん訳がわからなくなってくることも…。また、「それを了承しないと契約できません」と杓子定規に言われると、ちょっと馬鹿にされているような気分になることもあります。


もちろん、トラブルを防ぐためにきちんと説明するのは大切です。でも、そこまで細かくしないといけないのなら、そもそも電話契約自体に無理があるのでは…?と思ってしまいます。対面でもマニュアル通りに進められると、人間味が感じられず、機械的に扱われているように思うことがあります。


イベントPRの現場でも、分厚い運営マニュアルが配られることがあります。全スタッフが内容を共有するためには必要なのかもしれませんが、読んでみると「こんなことまで書く?」と思うような、当たり前のことが並んでいることも。もはや「マニュアルを作ること自体が仕事になっているのでは…?」と思ってしまうこともあります。


確かに成果物としてマニュアルがあると「しっかり準備しました」というアピールにはなりますが、それが本当に意味のある仕事なのか、少し考えてしまいますね。

 

 
 

これまで「実践PR講座」と題して、最新のPR事情を踏まえた実践的なPR戦略についてお話ししてきました。この講座もいよいよまとめの段階に入ります。今回は、これまでの内容を踏まえながら、どのようにPR戦略を考えるべきかについて整理したいと思います。


PRの戦略を考える際、私は「5W1H」の視点が重要だと考えています。特に、PR活動を行う際に最初に考えるべきことは、「誰に」「何を」「なぜ」伝えるのかという点です。

私はPRを「知らないことを、知らない人に伝えること」と定義しています。そのため、

  • What(何を):ターゲットが知らない情報は何か?

  • Who(誰が):その情報を知らないのは誰か?

  • Why(なぜ):なぜその情報を知らないのか?

この3つの要素を整理することが、PR戦略の土台になります。


PR会社がアドバイスや提案をすることはできますが、最終的には発信側が「誰に何を伝えたいのか」を明確にしなければなりません。「多くの人に、できるだけ多くの情報を届けたい」という相談を受けることもありますが、ターゲットや伝える内容を絞らないと効果的なPRにはなりません。


ただし、「一つの話題だけに絞る必要はない」という点も重要です。インターネットが普及する以前は、一つの話題を広く伝えることが主流でしたが、現在はターゲットを細かくセグメント化し、それぞれに適した内容を伝えることが可能になっています。


例えば、野球をテーマに考えてみましょう。

ドジャースの大谷翔平選手がメジャーリーグで活躍していることは広く知られていますが、野球のルールを知らない人は多くいます。また、日本のプロ野球ファンでも、メジャーリーグには興味がない人もいます。このように、「何を知らないか」は人によって異なります。


では、なぜターゲットはその情報を知らないのでしょうか?

  • 子供の場合 → そもそも野球をしたことがないから、ルールを知らない。 → 解決策:選手が直接指導する少年野球教室を開催する。

  • 女性の場合 → 野球場に行ったことがなく、観戦の魅力を知らない。 → 解決策:球場内にネイルサロンを設置し、楽しみながら観戦できる環境を作る。

  • 特定のチームのファンではない人 → 強いチームに興味があるが、特に応援しているチームがない。 → 解決策:選手補強やチームの躍進をアピールする。


このように、一つのテーマに対して異なるターゲットごとにPR戦略を立てることが、現代のPRにおいて重要な視点となります。

次回は、3つの要素の中でも特に「Why(なぜ)」に焦点を当て、さらに深掘りしていきます。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

顔写真 (2).jpg

中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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